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唐突に話を始めるレック様。
レ「ルック……昨日今日と、食事は大変美味でした。
腕を上げましたね」
ル「有難うございます」
お。なんだ。褒めに来たなら、別に邪険にする事も無かったか―― |
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レ「今度は甘いものが食べたいところですね。
パイとか」
前言撤回。 |
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ル「パイ……ですか?」
レ「そうです。作って御覧なさい。貴方ならできます。
これも修行です」
嘘つかないで下さい。
(絶対食いたいだけだこの人――!) |
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さらにさらに。
あろう事か、チビセラの噂話まで……!
レ「何故か最近、避けられているような気がするのですが……
貴方は何か聞いていませんか?」
あ。一応自覚はあったんですね! |
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ル「……ご自分の胸にお聞きになって下さい」
ルック、とっても慇懃無礼☆ |
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疑問が解消されず、不機嫌なまま裏庭を闊歩するレック様。
(なんでもいいけどそろそろ着替えませんか?)
すると、なんとその行く手に―― |
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あのアレが!(うぎゃー)
いいからさっさと通り過ぎて!という願いむなしく。
レック様、物凄く興味を抱かれた模様です。 |
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レ「たしか……家庭内害虫の一種ですね。
退治せねばならないのでしょう?」
そうですけどね。
いいから、ルックに任せて下さいってば!
レ「ルックの手を煩わせるまでもありません」
そして、次の瞬間―― |
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ブチッ!グチャッ!!メリッ!!!ぷちっ!!
(うぎゃあああああ!) |
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レ「なかなか……しぶといですね」
誰か!誰か―!!
この真の紋章使いに、正しいゴキの殺し方を
教えてあげてーー!!!
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見るにみかねたのか、とうとうルックがやってきました。
ル「どいてください、レックナート様。ここは僕が」
レ「まあ……いくら貴方でも、そう簡単にはいかな――」 |
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ぷしゅーーー。 |
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レ「……それは?」
ル「殺虫剤です。レックナート様」
レ「……新しい魔法ですか?」
ル「スーパーで売ってます」
レ「……」 |
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ル「……ここはもういいですから
いい加減着替えてらしたらいかがですか?」
レ「――わかりました。
任せましたよ、ルック。これも修行です」
嘘だそれーー! |
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一通りゴキ退治を終えたルック、
プチ畑から、出来たばかりのエルダーベリーの実を収穫しました。
ル「うん……良い香りだね」 |
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台所に戻ると、学校から帰ってきたチビセラが
(レック様の)朝ごはんの片付けをしてくれてました。
ええコや……
ル「おかえりセラ。後は僕がやるよ」
セ「はい!ではこれだけ洗ってしまいますね」
ル「もうすぐおやつにするから、ちょっと待っていて」 |
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さてさて。
採ってきたエルダーベリーと、ベーキングパウダー。
そして、砂糖をしっかりと混ぜ合わせます。 |
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ちょっぴり味見。
ル「うん……こんなもんかな」 |
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それらをまとめて釜戸の中へ。
出来上がったのは…… |
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焼き色と、甘酸っぱい香りが食欲をそそる、
エルダーベリーのパイです!
そういえばさっき、レック様に催促されてましたからね。 |
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レ「まあ……美味しそうなパイ……!」
ようやく着替えてきたレック様、真っ先にパイに飛びつきました。
念願かなって何よりです……。
レ「これも、修行のたまものですね」
それはどうでしょう。 |
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チビセラも、嬉しそうにパイを皿に取ります。
セ「わあ……とてもとてもお上手です!」 |
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その頃既に、ルックの隣はレック様が占領してしまってたので…… |
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向かい側にちょこんと座りました。
セ「ルックさま、いただきます」
ル「うん……焼きたてで熱いから、ヤケドしないようにね」 |
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セ「甘くてサクサクっとして……すごくオイシイです!」
ル「……そう?」
セ「はい!こんなオイシイお菓子、セラは初めてです!」
ル「……フフ」
無邪気に褒められて、ルックもまんざらではないご様子。
この二人はほんと、ほのぼのしてて良いですわ……。 |
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しかし……ルックが席を外すと、
そのほのぼのムードは一転。 |
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物凄い勢いで不機嫌になるチビセラ。 |
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ああああ…えらいこっちゃ。
マイナス記号点灯しまくり…。
この二人が、打ち解けあう日はくるのでしょうか〜? |